子供の頃から地図帳を見るのが好きだった。
暇なときは寝転がって地図帳を見ていた記憶がある。
山の同好会に入って道具を買い揃えた後、山に登る前にまず教えてもらったことは五万分の一の地図の畳み方とテントの張り方だった。
最初は歩くだけで精一杯だけど、そのうちに1本取るたびに(休憩のこと)胸ポケットからビニール袋に入れた折りたたんだ地図を出して広げては、これから歩くルートを読む。勾配は急なのか?尾根道なのか?そろそろ鞍部に出るか?とか・・。
山から下りてくると、自分の歩いたルートは赤線でなぞった。いつの日か地図が赤線で埋まることを夢見たこともあったなぁ。
北アルプス、南アルプス、上越や会津の山々の地図・・卒業するまでに40枚近くになったろうか?
結婚してこの家に来る時も地図と山の道具一式はすべて持ってきた。結婚しても山に登ろうなどと思っていたわけでもない。単なる記念といえばそれまでだけど、あの懐かしい日々が凝縮されている。
4年前にまた山を歩き始めてから、この地図を探したけどなかなか見つからなかった。何度もの引越しや荷物の移動で行方不明になっていたのだ。
それが半年ほど前にまたひょこっと出てきた。もう記憶のかなたにかすんでいた登山口や下山ルートもこれで思い出せる。
実際、4年の秋に登った南アルプスの赤石岳~塩見岳なんか、ずっと雨だったため写真も残っておらず、リーダーのH君が記録を提出してないので手がかりはこの地図のみだ。
今となっては実際の役には立たない地図だけど、お金では決して買えない大事なものだね。
入れてあるティッシュペーパーの箱も当時の○十年前のまま。