ゆっくりペースが幸いしたか、Oさんも快調のようだ。
よかった。すでに御池小屋から400mは登っていると思われるので、後は300mばかり登ったら稜線に出るはず。そうすればあとはアップダウンもそれほどない。
この高さまで登るとさすがにチョコレートやキャラメルなどの行動食が美味しい。
15分ばかり休憩して出発。
雨がぽろぽろし始めたので折り畳み傘を差して歩く。降ったりやんだりという感じで、傘を差したり仕舞ったりを繰り返す。
白根御池から上を見上げたときも、視界があるのは下のほうだけで、標高2500以上にはガスがかかっているように見えた。
道沿いはシナノキンバイがすごく多くて、シナノキンバイの株元にこちらも黄色いキバナノコマノツメが咲き乱れている。場所によってはサンリンソウも咲いている。ちょっとしたお花畑だ。
今日開いたばかりというような綺麗な花だ。惜しいことに暗すぎて撮影するときにフラッシュが光ってしまう。それでも、去年の仙丈ではたった一輪だけ見たクロユリも花がボロボロだったので、こんなに綺麗なクロユリを見るのは学生時代以来。
時折、下って来る人にすれ違う。
ミネザクラの花が散ってしまった木は先ほどから見かけたが、まだ花が咲き残った木が数本見つかる。樹高は精々1m半ほどだろう。木も小さいが花も小さく、それが下を向いて咲くので、下界の桜とは全然イメージが違い、可憐な雰囲気。御池小屋の管理人さんにミネザクラはもう咲き終わっていると、聞いていたので、思いがけない出会いに喜ぶ。勿論、初めての出会いだ。
標高2800を越した頃からダケカンバも見えなくなった。どうやら森林限界を超えたらしい。目に入るのはシナノキンバイやまだ花の咲いていないバイケイソウなどからなるお花畑。黄色い花はこの頃にはシナノキンバイだけでなくキンポウゲなども混じってくる。
ピンボケで申し訳ないがショウジョウバカマもちらほらと咲いている。ショウジョウバカマだけは下界のものと変わらない背の高さで草丈が20センチはある。北岳のショウジョウバカマは色が濃いようだ。
一箇所だけ白い小さな花が咲いている。これは実物は見たことがないが、ヒメイチゲに違いない。北海道でよく咲くと言う、そして四国でもその姿がまれに見られるそうだ。このヒメイチゲも以前から見たかった花なので、大感激である。
樹林がなくなって雨がまともに降るので、この辺りで合羽を着用する。恐らく稜線も近いと思われる。
一年ぶりのコイワカガミも道の傍らで見え始めた。ここのは草丈が5センチほどで、とても小さい。
いよいよ高山植物のオンパレードだ。
岩場に咲いているミヤマタネツケバナ。花や葉の感じは下界のタネツケバナとよく似ているが、とにかく小さい。岩場で咲くとどんな花でも数段可憐に見える。
8時30分頃、稜線に出たと思われる。
うっかりと分岐の道標を撮影し忘れた。
稜線に出てようやくハクサンイチゲに出会う。去年の仙丈ケ岳では藪沢新道の途中からすでに咲いていたが、ここ北岳では稜線上まで出会うことがなかった。
一年ぶりだね~。
稜線に出るとそれほどたいした登りはないので楽だが、風が吹き付けるのでとにかく寒い。私とSさんは稜線に出る前に合羽を着たが、Oさんはまだいいからと着ていなかったのだった。しかし、このまま合羽を着用しないで歩くと相当体温が奪われるのは必至なので、着用してもらう。西からの風がとにかく強い。視界はせいぜい20mほど。
秋田駒のコマクサ群生地を思い出す。
あの時も風が吹き付けて、傘など何の役にも立たなかったっけ。