広河原から大樺沢二俣までのコースタイムは二時間半になっている。
白根御池小屋への分岐も通り過ぎ、1時間ほど歩いたところで一本取る。空は晴れてはいないが、雨の降りそうな気配もなく、登りの天候としては申し分ない。まずまずのペースで登っているので、すでに標高1800には達しているだろう。行動食として途中のSAでチョコレートやキャラメルなどを買ってきたが、四国を出るときにミカンを買えば良かったと思った。暑い時期の登りは水分をたっぷり含んだものが無性に欲しくなる。
白花のタカネグンナイフウロを見かけた。去年の仙丈ケ岳では紫色しか見なかったが、このルートはタカネグンナイフウロが非常に多くて、これだけの株数が咲いていれば白花の株もあるということだろう。タカネグンナイフウロとともにミヤマハナシノブの花もたくさん咲いていて、花の山であることを実感する。登山道の傍らにはカツラの木が多く見られる。桂は庭木にもよく植えられるが、こんなに高山に生える木だとは思わなかった。四国の山ではあまり見かけないように思う。
Oさんが「ツバメオモトの実かな?」と言うので見てみたら、ほんとに丸っこい実が見えた。ユリ科ツバメオモト属。株元にオモトのような分厚い葉っぱが見える。この辺りで実がなっているということはもう少し登れば花が見られるかも・・。
後ろに見えている大きい葉っぱはヤグルマソウでこれも南アルプスではお馴染みの花だ。しかし、四国には分布がないので、私にとっては珍しい。
これは後ほど大樺沢の右岸に渡ってすぐに見かけたヤグルマソウの花。決して美しいと言う花ではないが、やはり南アルプスの樹林の中ではなくてはならない存在に思える。
イブキトラノオもそれほどたくさんではないがぽつぽつと咲いている。
ズダヤクシュが多くなってきた。四国でも剣山の登山道で見かける花だ。ユキノシタ科ズダヤクシュ属。私の図鑑にはこう記載されている「長野県の方言で喘息のことをズダといい、この草が薬用になると言う」すでに花は終りかけているようで、種をつけ始めていた。
今回の山旅では一番よく見かけたカラマツソウ。登り始めから稜線手前までかなりの範囲で咲いている。
標高1800辺りから、時折、キンポウゲ科の葉っぱを見かけていたが、花が咲いている株があった。この時点では何の花かわからなかったが、御池小屋で北岳に咲く花のポケット図鑑を見てわかったのだった。サンリンソウ。
すぐ近くにニリンソウの葉も見つけることが出来た。
イチリンソウやニリンソウよりも標高の高いところに咲くそうだ。実際、一番よく見かけたのは稜線に出る手前辺りだった。
前夜、雨が降ったのか、登山道は所々、水の流れ道になっており、まるで小さな沢状態になっている。
それまで大樺沢の左岸についていた道が右岸へと変わる。
その付近に咲いていたミヤマミミナグサ。高山にはイワツメクサやシコタンハコベなどよく似た白い小さな花が多くて、これも図鑑を見ないとなかなか名前が分からない花の一つ。
右岸に渡ると↑に貼ったヤグルマソウやこのトリアシショウマが綺麗に咲いている。
四国で見かけるアカショウマとは穂の感じが違うので何とか見分けがつく。
花の背後に大樺沢の流れが写っている。
茂みの中にクルマバツクバネソウが咲いている。
四国では普通のツクバネソウはどこにでも咲いているけど、クルマバツクバネソウのほうは見たことがないので、珍しく感じる。
葉が綺麗に輪生していて、姿に気品がある。
道はまたすぐに左岸へと渡る。渡る手前でミヤマハナシノブが美しい姿で咲いていた。
どうやら、咲きあがったばかりの一番美しい姿に遭遇する事が出来たようだ。