北岳に登る、その4、雪渓とサンカヨウ

トップのSさんは昔から歩くペースが速い。後ろをついて歩くと、普段、山にしょっちゅう登っている私にとっても、決して楽なペースではない。真ん中を歩くOさんが、少し苦しそうに見えたので、時間も時間だし二本目の休憩を入れる。14時40分。そろそろダケカンバも出てきたので、高度もかなり上がっていると思われる。

Oさんが頭を抱えている。「少し眠い」と言う。もしかしたら高山病が少し出ているのかも知れない。今日の行程は御池小屋までだし、それほど急ぐ必要もないので、ペースはゆっくりでもいいのだ。先頭がSさんだとどうしてもペースが速くなりそうなので、私がトップを歩く事にした。私のほうは最近は花を撮影しながらののんびりペースなので、Oさんにも負担が少ないだろう。

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歩き始めて直ぐにツマトリソウが咲いている。

去年の仙丈ケ岳山行の小仙丈の下りで見かけて以来だ。あのときはデジカメのバッテリーもメモリーもほとんどなくなり、おまけに時間もいっぱいいっぱいで、ようやくの思いでツマトリソウを撮影したのだった。

このツマトリソウは真っ白な花弁で、清楚だがツマトリソウはやはり縁がほんのり色付いてないと少し物足りなく感じる。

Dsc01518_1 やがて雪渓が見えてきた。遠くには八本歯のコルのギザギザも見えている。今年は例年に比べると異常に雪が多いと聞いていたが、なるほど、この時期とは思えないほど雪が多い。

昔登ったのは7月25日で、そのときは八本歯のコルまでずっと大樺沢左俣経由で登れたのだが、この雪ではアイゼン、ピッケルがないと無理のようだ。初日に御池小屋泊にしておいて正解だった。

300mほど上方に黄色いテントが張ってあるのが豆粒のように見える。その傍らでどうやら幕営している人が一人、雪渓のそばで動いているのも見える。

Dsc01520 雪渓の傍らの草つきにはイワベンケイも咲いている。普通は山頂付近の岩場で咲く花だが、ここは雪渓があるので、標高の割にはもっと高山で咲く植物が自生するようだ。

Dsc01521 雪渓はどんどん融けているようだが、それでもまだ登山道が雪渓に埋もれている場所もあって、そういうところは仕方なくキックステップを利かせながら歩く。こういうときはやはりストックを買うべきか?と思ったりしてしまう。昔はストックを持って歩く習慣がなかったので、私たちは皆、ストックは持たずに山に登っているのだ。

ところどころ雪が融けて道が出ているので、そういうところは勿論道を歩く。

Dsc01523_2 ふと見ると、サンカヨウが咲いているではないか。それも咲き残りの花などではなく、綺麗な真っ白な花だ。全部で3株ほど咲いている。

Dsc01526 バックに大樺沢の雪渓を入れて撮影してみた。いかにも高山の花という雰囲気が出る。

緑の大きな葉っぱの上に白い花が咲くので、白さが一層引き立つ。メギ科サンカヨウ属。四国には咲かない花なので以前からずいぶん憧れていた花だ。同じように四国に分布していなくとも、学生時代の山登りでハクサンイチゲやシナノキンバイ、シラネアオイなどは何度も見ているのに、不思議とサンカヨウだけは記憶にない。

Dsc01527 同じ場所から、ピントを山のほうに合わせた画像。上方にはガスがかかっており、残念ながらSさんが見たがっていたバットレスはガスの中だ。私も昔登ったときの記憶を手繰って見るがバットレスを見た記憶がない。どうやら昔も初日はガスがかかっていたようだ。

Dsc01530 想定外の雪渓上の歩行は何とか10分ほどで済み、二俣の分岐に出た。ここからは白根御池小屋まで樹林の中のトラバース道である。

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