休憩しているとヘリの音がやたら聞こえる。大樺沢上空辺りを飛んでいるが、どうやら物資を小屋に荷上げしているらしい。3連休を控えて、山小屋にも人が押し寄せるので、食料や水を大量に上げる必要があるのだろう。
ここからまだ1000mの下りが待っている。下りだから楽だと思っていたが、最近は下りのほうが足に負担がかかるので、気合を入れて下らねば・・。
カラマツソウはいくらでも咲いていて珍しくはないけど、3日目でようやく花がぐちゃぐちゃになっておらず綺麗に開いたものを見られた。雨やガスの日には花びらのように見えるシベ同士がくっついて、こんなに綺麗ではない。葉っぱがモミジの形ではないのでモミジカラマツではないようだ。
タカネグンナイフウロとカラマツソウが並んで咲いていたので、ツーショットで撮ってみた。
樹林帯を抜けて、草すべりに出てきた。ここからは白根御池を見ながらの下りだ。20代かと思われる若い女性が単独で登っていくのにすれ違う。この暑さでは大変だろう。
白根御池小屋には9時半頃到着。肩の小屋には置いてなかった「歩きながら覚える北岳の高山植物」を買い求め、トイレを借り、水の補給をする。下りは樹林コースを取るので、御池小屋から先は今まで歩いた事のない道だ。
樹林コースの名のとおり、うっそうと繁った針葉樹の森を通り抜ける。
この道はマイヅルソウや特にゴゼンタチバナガとても多くて、いたるところでゴゼンタチバナが咲いている。
倒木の上に見事に群生したゴゼンタチバナは、暫く見とれるほど見事だった。
可憐な花がこういう苔むした倒木や岩に咲いているのは誰が見ても好ましい光景だと思う。
この山旅で見かけた2株目の白いタカネグンナイフウロ。アルビノだろうと思うが、ふちがほんのりとピンクになった花も見られる。直ぐそばには普通の紫色の花を咲かせた株もあった。
ヒロハユキザサの株は前日にもっと高い場所でも見かけたが、そこでは花はまだまだだったが、ここまで下るとさすがに花を見ることが出来た。画像がピンボケで申し訳ないです。ユキザサの左にはハリブキも写っている。ここで標高は1900ほど。
お馴染みのギンリョウソウ。この辺りから、ずいぶんたくさん見かけ始めたが、まだ地表に顔を出して間もない株らしくて、どれも真っ白で綺麗だった。四国では今年は薄汚れたような色をしたギンリョウソウしか見てなかったので、こんなに綺麗な固体を見られて嬉しい。
そろそろ出てくるかな?と思っていたキソチドリに会えた。いつものことだけど、キソチドリはうまく撮れたことがない。一人だけ撮影に手間取る訳にもいかないので、画像はこの一枚だけ。しかし、キソチドリはこの後も数株の花を見ることが出来た。
小屋から300mほどは緩やかな下りになっている。それから先の300ぐらいが結構きつい下りだった。木の根っこをまたいだり、梯子がかかった下りで。下りも嫌だが、登りもこれはきつそうだ。
離れてはいるが、右手に大樺沢があるので、そちらから涼しい風が吹いてきて、暑さは感じない。少し広い場所で最後の休憩を入れた。さすがに一気に下るのは足に相当こたえるものだ。こういうときはやはりストックがあると違うのだろうか?使った事がないのでわからないのだが・・。
Oさんは膝がガクガクだというし、私は私で爪先が痛くなってきた。最近は長丁場の下りだと、どうも爪先が痛くなって困る。何か靴にクッションのようなものを詰めるとよいのかな?
地図を広げて見ると、もう少し下ると左に小さい沢があってこれに沿って少し下ると大樺沢への分岐に出るようだ。どちらにせよ後300mほどの下りだろう。
道の傍らには今まで見たことのない黄色い花が見え始めた。ほとんどは蕾だけど、一輪だけ咲いたのがあったので、何とか撮影した。帰宅して調べたところ、キンレイカというらしい。オミナエシの仲間だそうだ。初見の花だ。やがて大樺沢への分岐の道標まで下ったが、そのまま広河原と書かれた方向に道をとる。どっちに行っても広河原に出るので同じ事だ。
こちらのコースでは大樺沢ルートと違ってこのアジサイが咲いていた。確か、大樺沢ルートではまだ蕾だったと思う。蕾の時はヤマアジサイだと思っていたが、このアジサイは装飾花がなくて両性花だけなのだ。しばらく考えて思い出した。コアジサイだ。コアジサイは四国ではあまり見ないのでこれは是非とも撮影しておかなければ。
近くには白いコアジサイもあった。やがて見覚えのある広河原山荘の建物が見えてきた。やれやれ、何とか1700mを下り終えたようだ。
痛い足を引きずるようにして、南アルプススーパー林道を歩く。バス停までの歩きすら億劫に感じる。林道から見上げる八本歯のコル方面はやはりガスがかかっている。初日の12日と同じような眺めで、やはりバットレスは見えない。
バス停近くに咲いていたキヌタソウ。
道をはさんで反対側には四国では見ない赤紫色のホタルブクロも咲いていたが、足が痛くて、そこまで歩いていくのも億劫だ。バス停には11時40分着。バスの時間まで30分あったので、その間に肩の小屋で作ってもらったお弁当を食べる。
来るときは甲府側から入ったOさんとSさんも帰りは私と一緒に信州側の長谷村に下って、仙流荘で汗を流すことに決めていたのだ。戸台付近ではシナノナデシコやビロウドモウズイカも道路法面にたくさん咲いていた。汗を流した後、私の車に乗ってもらい、高遠経由で茅野まで二人を送った。途中、Sさんの飼い猫へのお土産にマタタビを少し採取したら、その付近にはこれも四国では見られないタマアジサイの丸っこい蕾やイケマの花、それにツルアジサイの花なども見られた。
茅野を出て中央道の諏訪インターに乗ったのは5時頃。日付が変わった翌15日の午前1時半。なんとか無事に我が家に辿り着いたのだった。今年の夏もまた梅雨の最中にもかかわらず予定通り歩く事が出来、その上展望も得られたのは、ほんとに感謝あるのみだ。年に一度、かつての山の先輩や後輩と歩くと言う事が主な目的だったが、予想以上の花の多さと綺麗さに感動し続けた3日間でもあった。まさに北岳は花の名山である。