« 花と雪渓の北アルプスへ、その3、雪渓 | メイン | 花と雪渓の北アルプスへ、その5、ルート変更 »

2007-07-22

花と雪渓の北アルプスへ、その4、アクシデント

秩父沢は橋がかかっていれば、5分もあれば通過できる場所ですが、雪渓を80mも高巻きしたので、それだけで30分ほどもかかってしまいました。雪渓の融けた場所からはいろいろな植物の芽生えが確認できます。イタドリも芽も確認できるので、イタドリヶ原が近いのかも知れません。通常の登山道に下ってくると直ぐにもうひとつの小さい沢を渡ります。この沢は清冽な流れで、秩父小沢というようです。地図上で水場と表示されているのはここのようですが水分はまだたくさん持っているので、補給はしません。道は再び、石の積まれた道となって、これを登ります。

P1120664

登山道からシャクナゲの花が見えました。色は白いですが、ハクサンシャクナゲと思われます。わさび平にいたる林道の上にもたくさんのシャクナゲが見えましたが、花が咲いた様子はありませんでした。今年は全国的にシャクナゲの花が裏年だったようですね。

約1時間歩いた16時50分、小休止を取ります。風もなく気温が高めで、普段はあまり水分を取らずに登る私ですが、さすがにこの日はすでに700mlほどの水分を摂っています。服装は速乾性のTシャツ一枚ですが、それでも汗だく。この調子では小屋の到着が6時を過ぎるので、ここで携帯から鏡平山荘の連絡先(たぶん高山の連絡先?)に電話を入れました。現在位置はイタドリヶ原の手前と思われると話しましたらライトを持っているかどうか確認されました。最悪の場合は懐中電灯を持って歩かねばなりません。小屋には遅く着くことを連絡しておきますとのことで、これで少し安堵しました。連絡がなく遅く着くと、小屋の方たちがずいぶん心配されるでしょうから・・。

17時、再び歩き始めます。17時10分頃、イタドリヶ原と書かれた岩の横を通過です。この後もしばらく樹林の中を歩きますが、途中Kさんがお腹が空いたといって、ザックだけおろしてパンを食べます。私のほうもこの辺りが一番苦しかったですが、水分を摂り過ぎたか、空腹は感じません。四国だと一日で標高1000m以上登ることはまずないですが、この日は新穂高温泉から鏡平まで1200あまりの登りです。前夜の睡眠不足もあって、絶好調とは言いがたい状態です。

Kさんが5分ほどでパンを食べ終わり、再び登り始めます。

P1120665 オオバキスミレの花が見え始めました。オオバキスミレは今まできちんと見たことがないので、急いで撮影しました。

北海道や東北など雪の多い場所に自生するスミレのようで、3年前の秋田駒でも見たように思います。

今回の山歩きではキバナノコマノツメもたくさん咲いていましたが、どちらかというとキバナノコマノツメが標高の高い岩礫地で咲いていて、オオバキスミレは樹林下で咲くようでした。

P1120666 キヌガサソウが咲いていました。これは生まれて初めて見る花ですから、撮影しないわけにはいきません。

草丈は30センチほどもあって、高山植物には珍しく大きな花です。

エンレイソウなども咲いているのですが、これは四国の山でも見ていますので、この日は撮影はパスです。

イタドリヶ原から20分ほどで今度はシシウドヶ原と思われる分岐に来ました。登山道の西側は雪渓で雪渓の横の草つきにはサンカヨウが綺麗に咲いています。地図ではここからさらに100m近く直登したところで直角に東に曲がり、後はトラバース気味に山の斜面を巻くようになっています。しかし、案内板が立ててあって、トラバース道へのショートカットというか、楽な道があるようなので、迷わずそちらを選びます。

やがてトラバース道に出ると、後は勾配もそれほどなく楽な道です。しかし、地図で確認すると山の斜面を巻いた後は小さな谷を詰めるようになっています。これが最後の登りでちょっときつそうです。

P1120667 この辺りからミツバオウレンが出てきました。ミツバオウレンも初めて見る花なので、撮影してみました。撮影時間は16時58分となっています。これがこの日の最後の撮影となりました。

というのもこの後、最後の谷を詰めるところでKさんがいきなり調子が悪くなったのです。

いつもとてもタフで元気なKさんは、この日もここまではとても元気でした。それが「息が苦しい」と言い始めたのでびっくりしました。ペースを落として、ゆっくり歩き始めましたが、それでも後ろを振り返ると、私との距離が開いています。どうやらザックの肩紐のために胸が締め付けられるようだと言い、顔色を見ると土気色。「鏡平小屋まで500m」の道標が出てきました。後ちょっとなのですが、その後ちょっとが、がくんとペースが落ちています。仕方なく、私が彼女のザックも担ぐことにして、しばらく様子を見ながら歩きます。しばらく歩くと「自分で背負えそう」というので、再びKさんが自分のザックを背負って歩きますが、やはり超スローペースです。登山道の傍らにはキヌガサソウの群落が綺麗にいくつも咲いているのですが、撮影どころでなくなりました。頭の中で「明日の朝、早起きして、小屋からここまで散策しに来よう」などと考えながら、最後の登りを登ります。「熊の踊り場」などと書かれた場所も行き過ぎどうやら稜線に出たような感じです。ガスのために視界は50mもなくて、小屋がどこなのかさっぱりわかりませんが、木道が出てきたので、それほど遠くはないはずです。

小さな池のほとりに出ましたが、Kさんの顔色はますます悪く「気持ちが悪い」と言うので、「吐き気がする?」と訊くと「少しする」とのこと。どうやら一時的な酸欠状態に陥っているようです。池のほとりで少し休んでいるようにと言って、Kさんのザックも背負って、私だけが先に進みます。小屋は直ぐ先にあるはずと思ったら、池からものの1~2分で小屋に出ました。時刻は18時40分。やれやれ・・・。

小屋番の方にとりあえず、状況を説明して、ザックを置いて池に引き返します。Kさんは頭がふらふらすると言いながらもなんとか、自分の足で歩いて小屋まで来ることができました。

小屋で宿泊名簿を書いていると、ちょうどお医者さんがいらして、Kさんのために睡眠導入剤と痛み止めを処方してくれました。たまたま山小屋の宿泊客にお医者さんがいたのかと思っていたら、そうではなく夏場に双六小屋に診療所が開かれていて、そこに待機する予定のお医者さんなのだそうです。

しかし、Kさんはこの後も小屋の食事は一口も食べることができず、寒いといって震え、おまけに両足の太ももとふくらはぎが何度も痙攣するという状態。意識も半分朦朧状態で吐き気があって、薬を飲むのも苦労したようです。私もその日の水分の摂り過ぎが災いして、小屋の夕食はほんの1口2口しか食べられませんでした。

小屋の方はとても親切で、幸いこの夜は宿泊客が少なかったので、1部屋を私たち二人だけのために用意してくれました。睡眠剤のおかげでKさんはよく眠ってくれて助かりましたが、私はといえば、午前2時までは熟睡しましたが、その後は寝付けませんでした。やはりKさんの今後の状態と、その後のコースをどうするかが心配だったのでしょうね。

コメント

30代の頃、高瀬ダムから烏帽子岳に登り、笠が岳まで縦走した時のことを思い出しましたよ。
私も水晶小屋への登りの途中でKさんのような状態になり、小屋についても寒気と頭痛でまいりました。
この症状には熟睡が一番の薬のようですね。
Kさんも熟睡できたので翌日は元気になられたのではないでしょうか。

アクシデントにも冷静に対応され、けいさんがいてくれたおかげで事なきを得たようで何よりです。
と一安心しておいて、続きを楽しみに待たしてもらいます。(笑)
でも、帰ってからけいさんの方に疲れがどっと出たんじゃないでしょうか?

三太郎さん、こんばんは。
烏帽子~笠が岳のコース、地図で確認しました。双六辺りは私が歩いたコースとだぶっていますね。しかも、その山行のときに同じような症状に遭われたのですか?
鏡平で出会ったドクターもおっしゃってましたが、やはり睡眠不足や疲れから来る症状らしくて、眠れば治るのだそうです。
私自身はそこまで山でひどい症状になったことはなかったので、ちょっと驚きました。そうそう、ご推察のとおり、翌日はKさんもけろりと回復してやれやれと胸をなでおろしたことでした。やはり、山では何があるかわかりませんね。

housiさん、こんばんは。
いえいえ、全然冷静ではなかったですけど、後輩の体調不良が小屋の少し手前だったので助かりました。あれがまだ小屋まで二時間ぐらいのところだったら、下るよりほかなかったかも知れません。
私のほうは山歩きよりも、帰りの運転のほうがずっと雨の中でくたびれたかも?でも、翌日はいつもと同じ時間に起きてどこも疲れはなかったですよ~。

コメントを投稿

フォトアルバム
Powered by Six Apart

私のもうひとつのブログです。よろしく

更新ブログ