冬の石鎚へ、その7、下山
登りでは途中、おにぎり一個しか食べてなかったので、弥山でもう一個食べておこうと思ったのに、結局、素晴らしい眺めを見たり撮影したりしていて、食べそびれてしまいました。
この日は冬用のガスの新しいのとプリムス、コッフェル、カップヌードル、ポットにはコーヒー用に熱いお湯、それに分厚いダウン、細引き・・などなど夏の山行に比べて4割り増しぐらいの荷物も持参していたのですが、結局、どれも使いませんでした。
下りは登りに比べて汗もかかないだろうと、薄手のユニクロのダウンを着用して下り始めます。それと、登りは撮影のために完全防水の手袋を左手にしか着けなかったのですが、下りでは気温も低下するので、両手に着用します。
下って直ぐの鉄板道です。山側の手すりはほとんど雪に埋もれてしまっています。
ここは手すりがまだ谷側にあるので安全ですが、中には谷側の手すりが雪に埋もれてしまって、何もないところもあるので、そういう場所はストックを突き立ててバランスを崩さないように進みます。
登りのときにあまりにも急でなかなか登れなかったこの斜面では下りはもっと苦労しました。
山は概して登りよりも下りのほうがはるかに危険です。
この斜面、私は6本爪の軽アイゼンだったので、斜面でとまってくれず苦労しました。
下が平坦なら、まだ滑っても安心ですが、下が見えませんからね、一旦滑るとどこまで行くのやらという感じです。ダブルストックのおかげで何とか下れたと言う感じです。
そんな急斜面が二箇所ありました。
Tさんは10本爪のアイゼンを着用されてたので、かなり安定感があったようです。私も次回は必ず10本爪か8本爪のアイゼンを用意しようと固く決意したことでした。
何とか二箇所の難所をクリアして、後ろを振り返る余裕が出来ました。
石鎚の三角点にいたる稜線が西日に照らされているのが見えますが、その向こうに聳えているはずの二ノ森はもはや見えません。
そして稜線付近の針葉樹は真っ白です。
この辺りからは危険なところもなかったはずです。
後方の山頂方面を振り返りますが、あの稜線の向こう側にはまだ西日が輝いているようですね。
何しろ夜明峠を過ぎると、この眺めも見えなくなるのです。
瓶ヶ森の氷見二千石原が西日を受けて真っ白に輝いています。
ロープウエイの最終便が17時だと聞いていたので、必死に歩きます。
下りだと言うのに、汗ばむほど頑張って歩きます。
お腹がかなり空いたので、夜明峠を過ぎて直ぐのところで、少し休憩を入れておにぎりを食べます。
何しろ、ここまでおにぎり一個食べただけなのでした。
先ほどから登りで抜き抜かれつしていたスノーシューの男性が後方からこられていたので、ここで先に行っていただきました。この方はやはり天狗岳まで往復されたそうです。
夜明峠と言えば、石鎚に来る前夜にその二日ほど前の5日に夜明峠付近で遭難騒ぎがあったことを知りました。
こんなに天気が良くてトレースがはっきりしていれば、道を迷う心配もないのですが、山は一旦、ガスって、トレースが消えれば、ほんとに怖いです。雪の山で道に迷ったことはまだありませんが、夏ですらガスっているときの道迷いは怖いものです。
食べ物を口に入れてお腹がしっかりしたので、7~8分後に再び歩き始めます。
16時14分、鳥居が見えてきました。
確か、この鳥居から先はゆるい登りになっているはずです。
急いで歩いているため、下りでも暑く感じるほどなので、ここでダウンを脱ぎます。
急いでまた歩き始めようと思っていたら、Tさんが「最終のロープウエイは17時20分よ」と教えてくれました。
最終は17時だとばかり思っていたので、その一言でかなり気が楽になりました。
緩やかな登り返しを登っていると前方に先ほどのスノーシューの男性が見えました。
一旦は見えなくなった日差しがここにきて再び夕日になって射し始めました。
日が当たると木立や雪が殊のほか綺麗ですね。
この日はほんとに最後の最後まで天気に恵まれたようです。
雪だるまの目鼻、口は木の枝で出来ていました。
左肩に小さなウサギがちょこんと乗っけてあるのがなんとも可愛かったです。
今年はウサギ年だからでしょうね。
思ったより早く、成就社の門が見えてきました。
この分なら最終より一つ前の17時のロープウエイに乗れそうです。
16時32分、成就社到着です。
夕方になってもまだ瀬戸内海と平野部がしっかり見えていました。
下界も今日はのどかな一日だったようですね。
ロープウエイの駅の直ぐ上で撮影した瓶ヶ森の画像がこの日撮影した最後の画像でした。
石鎚方面には今まで10回近く来ていると思いますが、早朝から夕方までこんなに瓶ヶ森が一日中見えていたというのは初めてだと思います。
ロープウエイ乗り場には結局16時50分の到着でした。帰りのロープウエイの中では、スノーボードの男性ともいろいろ山の話など弾んだことでした(どこのどなたかは存じ上げませんが)
下山したといっても、帰りの道路でスリップなどしては何にもならないので、帰りも慎重に運転して帰ります。
自宅の夕食は前夜遅くにおでんを煮込んであったので、それほど気ぜわしく帰宅することもなく、途中、PAでコーヒー休憩などして帰りました。
何しろ、山ではこの日はコーヒーを飲むことも出来ませんでしたから。
新年早々の山歩きを、予定変更とはいえ、思いもかけず、新雪たっぷりの石鎚に登れたのは一にも二にも天候が素晴らしく良かったおかげでした。遅い時間の出発はどう考えても褒められた話ではないですね。それと、今年は雪が深いので、アイゼンはきちんとしたものを用意すべきでした。
次回からは今回の経験を踏まえて、もう少し余裕のある歩きにしたいと思います。
keitann様 こんにちは
山登りのレポートは上りに殆どを費やして、下りの記事は大概の場合、猛スピードですね。
今山行では、交通機関の制限時間がありますので、スリルを持って書かれていて、そういう読み応えがありました。
それにしてもこの時期は日没タイムが早すぎますね。
上から9番目のTさんが山頂方面を撮影している写真で日没近しを思わせるような雰囲気が既にあります。
スリル感溢れる山行を無事に終えられて良かったですね。
小生も6本爪しか持っていませんが、ほとんど単独行ですので、これで危険な場所には近づかないことにしています。
ピッケルはもちろん持たないことになります。
迫力あるレポートをありがとうございました。
写真もとても素敵で、文章も読み応えがあり、背筋がぞくぞくの連続でした。
投稿: ぶちょうほう | 2011-01-16 10:35
ぶちょうほう様、こんばんは。
何でもない夏山や秋山ならば、下りは登った道をただもう一度辿るだけのことですが、このときは登りで苦労した急斜面をどう下ろうとかいう心配がありました。
思ったとおり、てこずりまして、下りの難しさを嫌と言うほど味わいました。
日没自体はこの日は5時半ぐらいまで周囲が明るくて心配なかったのです。ただ、下りはどうしても西に大きく聳える石鎚の影になってしまうので、道はほとんどが日陰を歩くこととなりました。でも、正面に目をやると瓶ヶ森方面は西日を受けて明るく輝いており、心理的には日没が来る心配はなかったのです。
私の住む市よりも石鎚はかなり西なので、日没も遅いはずですし・・。実際、車についたときもまだ明るくて、走り始めてから薄暗くなったと言う感じでしょうか。
ただ、最後の休憩のときはペットボトルのお茶が凍り始めていて、下ったときに車のフロントガラスも凍っていたので、ポットのお湯を流して溶かしました。
私も自分の車がノーマル車そしてノーマルタイヤなので、一人では到底、高山には近づけないし、冬の山を知っている方とご一緒すると、やはり安心ですね。
もうこんな機会は滅多にないでしょうが、それでも雪の感触はもう一度ぐらい味わいたいものです。
投稿: keitann | 2011-01-16 17:31