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2011-08-11

初めてのアルプス単独行、その22、下山

11時2分、小屋を出て、急ぎ足で奥丸山への登山道に向かいました。

P7282654

画像中に板の橋がかかっていますが、それを渡ると奥丸山への登山道になっています。

前日、樅沢山の山頂でお会いし、その後槍ヶ岳山荘での夕食時も同じテーブルで親しくお話させていただいた京都の男性2人連れの方も、奥丸山経由のエスケープルートで下山されるのか、私の後を歩いてこられました。

槍平小屋への下山路でも、ふとクマのことが心配になったのですが、奥丸山のように人の気配があまりない山はクマがいる可能性も高い恐れがあります。双六小屋で同室になった人に、前日、水晶岳のてっぺんでクマが出たと言うのを聞いて、それも心配です。それに、人の良く通るルートなら単独でもそれほど怖くないですが、まるっきり人の通らないルートで怪我などすると、どうしようもありません。

そこで、後ろから来られていた京都の男性2人に「同行させていただけますでしょうか?」とお願いしたところ、快く承諾していただけたのです。

エスケープルートは先ほどから地図を眺めて、あらかた頭に入っていたので、私がトップを歩かせていただきました。

P7282655 奥に見えているのが槍平のテン場から眺めた奥丸山方面です。

地図で見ると槍平から奥丸山までは500m弱の登りです。

登り始めると、案の定、急登でしたが、それでも思っていたよりは良い道でした。

この後は一刻でも早く左俣の林道まで下山するため、画像はほとんど撮っていません。

京都の男性2人は70歳の方と40歳ぐらいの方ですが、70歳の方はすごくお元気で、登りもぴったりついてこられます。

雨はその間も止むことなく、滝谷で雨が止むのを待たなくて良かったと思いました。

P7282656 12時8分、奥丸山から千丈乗越への稜線まで登ってきたので、休憩を入れました。

下のほうから、富山の3人の方が登ってくるのが見えます。

彼らもこのルートを歩くことにしたようです。

奥丸山の稜線はニッコウキスゲが見事に咲き乱れていました。

人があまり歩かないと、花も見事に咲くものですね。

P7282657 もう一枚だけ画像を撮りましたが、5分ぐらい立ち休憩しただけで、直ぐに出発します。

P7282658 稜線に出てからは傾斜も緩やかになった道を登ると、12時29分に奥丸山山頂に着きました。

コースタイムよりもかなり速めのペースです。

この後は中崎尾根を下ります。

尾根には早くもミヤマホツツジが咲いていましたが、撮影することもなく足早に下りました。

P7282659 13時13分、わさび平方面への分岐までやってきました。

ここからは中崎尾根を新穂高まで直接下ることもできるようですが、私の地図には記載がないのと、槍平小屋の方が奥丸山からわさび平に下ってくださいと言っていたので、尾根の西斜面を下りました。

ところが、このわさび平方面への道も相当な急斜面を転がり落ちるような道です。

木の根っこを利用したような道で悪路と言って良いと思います。

200mぐらい下ったら、ようやく道は少しましになりました。

相当下ったと思える頃、沢の音が聞こえてきたので、左俣の沢の音だと思ったら、これが下丸沢の流れる音でした。

下丸沢も水量がずいぶん増えていて、轟々と音を立てて流れています。

川幅の狭くなったところを探して渡渉したのですが、水はふくらはぎの高さまでありました。すでに登山靴の中は水浸しだし、衣類もすべて濡れていたので、靴がすべて水に浸かる渡渉も抵抗はありません。

ダブルストックのおかげで無事に渡渉し終え、後ろから歩いてこられる70歳の方はストックを1本しかお持ちでなかったので、私のを一本お貸ししました。

渡渉の後は沢を高巻きするような感じでトラバース気味に歩き、最後はジグザグ道を下ります。珍しい花なども見かけましたが、ここは歩きを優先して、撮影はなしです。

P7282660 14時47分、登山道の入り口まで下ってきました。

この先は林道歩きなので、半分寝ていても歩けるような道です。

でもほっとしたら、今度は富山の3人の方が無事に沢を渡れただろうかと気がかりでした。

P7282662 14時54分、小池新道の入り口に着きました。2日前に通った場所です。

青い雨具の方が70歳の方です。

結局、奥丸山ピーク(2439m)から標高1400mのわさび平までの標高差1000mをノンストップで下ってきたのでした。

とてもお元気な70歳でほんとに驚きました。

そして、この日は余分に奥丸山を登ったので、下った標高差は累積で2500mにもなりました。一日に下った標高差としては私の最高です。(^_^;

P7282663 以前来た時にこの辺りで見かけたはずのウツボグサを帰り道で見つけました。

登りのときは見つからなかったのに、帰り道では見つかったのが、なぜか嬉しかったです。

ここからは3人で楽しく花しながら下りました。

即席のパーティーでしたが、役割分担もうまくいって、なぜかお2人が前々からの知己のような錯覚さえ覚えました。

わさび平小屋では15分ほども、いろいろと話したでしょうか。

さて、新穂高まで最後の歩きにかかろうとしたら、富山の3人が下ってきたので、お互い大喜びしました。

お互いに「頑張ったね」と言い合って、分かれました。

P7282665 新穂高までの林道歩きではオオヤマレンゲが綺麗に咲いていました。

新穂高の温泉で一泊されると言う京都のお2人に別れを告げて、駐車場へと向かいます。

P7282668 蒲田川は行きの日とは打って変わって、白濁した水が轟々と流れていました。

P7282670

新穂高の無料駐車場に着いたのは17時5分でした。

この後すぐに、近くの温泉に立ち寄ったのは言うまでもありません。

ずぶ濡れになった体はさすがに冷えてしまい、温泉がこれほど嬉しかったのは7年前の秋田駒でやはりずぶ濡れになったとき以来でした。

帰りは高山で夕食を食べた後、例年と同じように四国の我が家まで運転して帰ったのですが、淡路島で仮眠したので、帰宅は29日の早朝でした。

悩んだ末での単独行、しかも最終日は予定より2時間余計に歩くことになりましたが、山小屋でめぐり合った人との楽しい会話でいろいろな人の山への熱い思いを知ることができて、ずいぶん感慨深いものがありました。

また、最終日に京都の方たちと素晴らしい歩きを共にさせていただいたのは一生の思い出になることでしょう。

毎年歩いている北アルプスですが、今年も山から素晴らしい思い出をもらいました。

コメント

単独行、悪天候、エスケープルート・・・。
情景描写からドキドキ感がよく伝わってきます。

仲の良いグループもいいものですが、
このような単独行も捨て難いですね。

たくさんの花を見せていただきました。

№22まであったのかと思うほど、3日間の出来事は実にいろいろありましたね。
keitannさんにはこのまま歩き続けて欲しいくらいです。お終いに来ちゃってやや残念な感も。とにかく楽しく拝見させていただきました。

ちょっと不思議に思っていたのですが、四国の山にはほんの一部にしかいないらしい熊の事、keitannさんにはやっぱりそれほど恐怖心はないのかなあと思っていました。まして単独なのに。
でも、どの画像にも前後に人がいて、読んでいく間にそんな心配はなさそうだとは感じました。
ずっと遠くからなら見てみたいけど、出会いたくはない、どうか出てきませんようにと祈りながら、白山を歩いて来ました。
もっとも、花や景色を見ている間にすっかり忘れていますけどね。

エスケープルートでご一緒になりました関西男二人組のうちの若い方のKです。

お花の写真が盛りだくさんのブログで楽しませていただいております。

自分達と、偶然にも同じルートだったので、このブログを見ますと、今年の北アルプス登山を克明に思い出します。

keitannさんとは樅沢岳で写真を撮っていただき、女性で単独行で、かつ一眼レフを担いで、よく話すし、よく聴くし、元気な人だなと思っていましたが、最後にエスケープルートで、とてもお世話になりました。

エスケープルートで、特に奥丸山からわさび平への下山道で自分たちは何回か滑ってしりもちを着きましたが、
keitannさんの足取りの確かさは、一緒に歩いて感じました。

天候に恵まれませんでしたが、心に残る登山になりました。どうも有り難うございました。

keitannさん、おはようございます。
今回の北アルプス登山、何度も拝見させて頂きました。
感情的ではなく冷静に書かれているので、
  何か山岳小説を読んでいるような気分でした。
当然ながら臨場感があるので私も少しだけご一緒した気分でした。
悪天候の中、美しいお花の写真も撮られて・・・。
今回も感動を頂きました、ありがとうございました。

老少年さん、こんにちは。

老少年さんも、いつも単独行、その上テント泊されていますね。
私も昔はすべてテント泊で歩いたので、テント泊の良さもわかっているのですが、今では体力も落ちてますので小屋泊まりで我慢、我慢です(^_^;
日帰りでの単独行は四国の山では時々していますので、今回も一人で歩くことそのものには抵抗はありませんでした。むしろ、一人で山に対峙するほうが好きかもしれません。パーティーでの歩き、単独行、それぞれの良さがありますね。
そして、山歩きは多少の困難を伴うほうが、下山時の感激がより大きいと言うのは当たり前のことですが、今回もそれを強く感じました。

noiさん、こんにちは。

noisんもその後、もう一度白山に登られたんですね。
やっぱり、泊りがけの山行も念に一度ぐらいはしたいですよね。朝露を滴らせた可憐な花、やっぱり泊りがけでないと見られませんよね。
私自身も最終日は槍からの下りで、名残惜しくて、何度も何度も稜線方面を振り返りました。誰もいない槍の裏側・・・目を閉じると浮かんできますよ。
クマの心配は最初はしてなくて、でも双六小屋で同室の方が水晶でクマがでたというのを聞いて、驚きました。
でも、2日目までは人もまずまずいましたし、心配はしなかったのです。最終日は、驚くほど人が少なくて、初めてクマの心配が頭を横切りました。クマ鈴も持ってなかったし・・・。
クマは昔、北アルプスで見てるんですよ。沢をはさんだ対岸でですが・・・。知床でもテントの周りをうろつかれたことあります。(^_^;四国の剣山系ではクマの糞も見てます。
アルプスは人が多いので、まず大丈夫だと思います。

Kさん、こんにちは。

山での出会いは一期一会ですから、それだけに鮮明に記憶に残りますね。
あのとき、天気が良くて、一般ルートを下っていたら、一人でごく普通に下っていたことでしょう。Kさんたちと一緒に歩かせていただくこともなかったでしょうし、この山行がこんなにも印象深い山行になることもなかったでしょうね。
そう考えると、山では晴天だけが最良というわけでもないみたいです。山は春夏秋冬、晴れの時、雨のとき、それぞれ表情を変え、何百回歩いても同じことはありません。
奥丸山からの下りはひどい道でしたが、ダブルストックのおかげで膝への負担も軽く、下ってから膝ががくがくすることもなかったです。靴もあれだけ濡れたまま歩いても靴擦れ一つすることなく、最近の装備はほんとに素晴らしいです。もう一人の方の賢明なご判断で、下りで一度も休憩することなく一気に下ったのも、結果的には早く下ることができて、良い判断でした。雨の中、休憩しても体が冷えて消耗するだけだったでしょうね。
やはり長年の経験は素晴らしいです。
私にとっても今回の山歩きは一生の宝物となる歩きでした。
ほんとに、ありがとうございました。

ミャーのママさん、こんにちは。

いったん、山に入ると、割と冷静になる私なんですよ(^_^;
普段は相当、そそっかしいんですけどね。
同行してただいた↑のKさんにもお話したのですが、昔は7泊8日でアルプスを縦走したり、秘境そのものだった知床で滅多に人の歩かないところをパーティーを組んで歩かせてもらったりで、いろいろな経験だけはしてるかも知れません。そんなあれこれが、歩く際にはやっぱり役立っているのでしょうね。
私が歩いたコースは花も見事で、お花畑コースと言えます。
ミャーのママさんちからはお近くなので、そのうち一度ぜひ登られてくださいね。

keitannさん こんにちは
今年もアルプス山行、毎回わくわくしながら楽しく読ませていただきました。
たくさんの花を撮りながらの山登りはいつもながら感服しています。
冷静な行動はお若いときの基礎や経験が生きているからなのでしょうね。
私は50代のときに東鎌尾根から槍ヶ岳へ登りました(ツアーでしたけどね)頂上のお社の写真にその時のことを思い浮かべていました。
それと山でまだクロユリを見たことがないのでkeitannさんの写真で見た気分になりました。ありがとうございました。

まちさん、こんばんは。

コメントをいただき、ありがとうございます。
自分自身の自己満足で思いっきり長々と書いてしまったのですが、個人的な記録でもこうしていろいろな方が読んで下さると、それはそれでとても嬉しいです。
東鎌からの槍はオーソドックスなコースですよね。
私は相当へそ曲がりだったのか、昔はわざと槍を外して歩いてたような気さえします。大天井以北はほとんど登ってるんですけどね。
クロユリはこのコースはずいぶん多いですよ。
時期が早ければクロユリベンチと言う場所で群生してますし、今回は双六小屋の近くでたくさん見ました。
あの花の多い白馬のコースでもあまり見かけなかったんですけど・・。
また、機会があったら、西鎌コースもチャレンジなさってください。良いコースですよ。

こんばんは~♪
お疲れ様でした。
心地よい疲労感でしょうか?

山の事はさっぱり分かりませんが、帰られてからブログに載せているのだから、無事に帰っていると分かっていてもドキドキでした。
お花も沢山咲いているのですね。
今の時期が一番沢山見れたのでしょうか・・・

凄い行動でしたが、達成感があってよかったですね。

keitannさん、こんにちは♪
長編小説を少しずつ読ませて頂いたみたいで、私も 充実感いっぱい?です(^_^)v。
本当に お疲れ様でした。。。

山は…私は全くわかりませんが…
記事を読ませて頂いてると、進むか 戻るか、別のルートにするか…積み重ねた経験と、冷静で賢い判断力、そして体力、気力が必要のようですね。
そして、あんなに かわいいお花に逢えるのですね。。。

愚息も 10日に、富山から剱岳辺りで主に雪上訓練で黒部ダム辺りから下山、20日頃帰るそうです。6人の部員と7人のOGだそうです。 また なにやら煮込んで凍らせて、50キロ担いで行きました。
初めは心配しましたが、好きにして下さい(笑)、という気持ちです。

私は、今、また新幹線ナウで…(笑)、福山の母の新盆に 、母の好きだった 種から育てたタカサゴユリを持って、向かっております。
やはり、満席ですね~(^_^;)。

ベルママさん、こんにちは。
槍ヶ岳から帰ってきて、すでに2週間が過ぎました。
そうですね、今回の歩きは疲労困憊というほどでもなくて、下ってからも結構元気が残ってましたよ。
後2時間歩けと言われれば歩けたと思います(^_^;

お花は、7月中旬に比べると、すでに終わってしまった花もありましたが、新たに咲き出した花もあるので、どちらも良い時期だと思いました。
当初の予定のコースを歩くことができたので、達成感は得られました。
最終日は雨でしたが、歩き自体はきっちり歩けたので、それもまた良しと思っています。

なずなさん、こんにちは。

一気にアップできるといいのですが、家事やその他の用事も片付けながらですので、毎日ボツボツと書くのが私には向いてるようです。それに書いている時間はアルプスを思い出して、それもまた楽しかったです。
帰ってからも、気持ちだけはアルプスを彷徨っていたような??
ルートの選択はそのときの天候、自分の体調、ルート状況などで、そのつど考えます。
大事なのは無理をしないこと・・・。
今回は体調も悪くなく、小屋に着く時間も早めだったので、精神的にも余裕がありました。
息子さん、剣沢で雪訓ですか?
あそこは真夏でもたっぷりの万年雪が残っていて、大昔、私が夏合宿でテントを張ったときも、夏スキーで滑ってる人がかなりいましたよ。
ピッケルで滑落停止の練習などされてるんでしょうね。
そうそう、大学になったら、親は黙って見守るだけですよね。
うちの末っ子も一向に帰省してくる気配がありません。
お母様、初盆ですね。

私も、大阪の親類に不幸があって、主人の代理で明後日は大阪まで出向き、お葬式に参列することになりそうです。

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