槍穂展望の山旅、その16、わさび平に下る
鏡平山荘ではほかの皆さんは出発された後で(そりゃそうでしょうね)、スタッフの方々が後片付けされています。
山荘の入り口で、偶然にも去年お世話になったドクターにお会いしました。Kさんが熱中症か何かでひどい状態に陥って、どうにか小屋にたどり着いたときに、薬などを処方してもらいお世話になった方です。今年もまたカメラの機材を荷揚げするために、前日に登ってきたそうです。一年前にお世話になった小屋の方といい、こうしてまた元気で同じ山で会えることの不思議さにびっくりしました。
そして、新穂高まで下るだけというのんびりした予定の私たちは、小屋の前で槍を見ながらモーニングコーヒーを飲んだ後、下山にかかることにしました。
山荘の前にはベンチよテーブルが幾組か置いてあって、槍を見ながら食べたり飲んだりできます。ほんとはコーヒーの粉を忘れてなかったら、逆さ槍の見える池のほとりのデッキで、コーヒーを沸かして飲めるのですが・・・。去年、池のほとりで飲んだコーヒーの味は今も覚えているほど美味しかったのでした。
山荘の方はサービスで柿ピーまでつけてくださったのでした。とても家庭的で気持ちのよい小屋です。
コーヒーをいただいた後、7時10分に下り始めます。
上に見えているのは手前の丸っこいこぶが大ノマ岳、向こうに見える岩山が抜戸岳と思われます。
槍も見事でしたが、抜戸方面も大迫力で、下る途中に何度も見上げました。
ミネザクラもまだまだ綺麗です。
登りの日もよい天気でしたが、それ以上の快晴です。
Kさんと「これは中部地方も梅雨明けしたんじゃないかな~」と言いながら下ります。実際、その日に中部も関東も梅雨明けしていたことを、下山してから知りました。
シシウドガ原へのトラバース道の途中で、登ってくる人と、そろそろすれ違うようになりました。わさび平を早朝に発った人なら、そろそろこの付近を歩いていてもおかしくはないでしょう。
トラバース道ではゴゼンタチバナやアカモノなどが前日の雨のためにしっとりと露をまとって、とてもよい雰囲気です。
朝の歩きは、草花の表情も素晴らしいですね。
シシウドガ原付近の雪渓が見えてきました。雪渓の左上のこぶのようなのが大ノマ岳でしょうね。
7時55分、シシウドガ原到着です。ここで一本取る事にします。
双六小屋で19日に一緒に下りませんかと誘われた単独の男性が、このシシウドガ原へ直接下ってくると言っていたのを思い出して、上を見上げると、ほんとに誰か下ってきます。
雪渓の真ん中に小さく人が写っているのがおわかりでしょうか?このルートは昭文社の地図では廃道となっていますが、私の持っている昭和51年版のアルパインガイドには載っていました。
大ノマ岳と弓折岳の途中にある大ノマ乗越から下ってくるコースです。下り切られるのを待って確認すると、やはり双六小屋で誘われた方でした。丁度同じ頃にシシウドガ原でお会いできるとは偶然でした。雪の状態をお聞きしたら、全然、危なくないと仰ってましたが、廃道なので、誰でもが安全に通れる道ではないと思ったほうが良さそうです。しかし、この廃道経由だと、鏡平を通らないので、かなりショートカットになると思われ、時間は1時間半ほど短縮できるのだそうです。この方は3時起きして、画像をたくさん撮影されたそうで、大きなザックには三脚など機材をたくさん背負われていました。それを聞いてKさんが「やっぱり双六泊まりにしとけば良かったかな~」と言いましたが、これほどピーカンに晴れるとは神のみぞ知るですから、鏡平泊りでもそれはそれで良かったと、私は思っています。
私たちが登ってきた17日はほとんど人に会わない歩きでしたが、この日は快晴の連休初日とあって、したからどんどん登ってきます。
画像に見える稜線の中央に一番くぼんだ部分がありますが、そこが大ノマ乗越です。
8時20分、再び下り始めます。
オオバタケシマランだと思うのですが、花がまだ咲ききっていません。今度はどこかで開いた姿を見てみたいものです。
サンカヨウと穂高を撮影しましたが、この頃には陽射しが強くなりすぎて、サンカヨウの白がうまく撮れません。
岩の上ではミヤママンネングサでしょうか。登りの時にも見かけましたが、そのときはまだ咲いてなかったのが、二日後の下りでは咲いた花が見られました。
高山も急激に夏になるところですね。
ひっきりなしに登山者が登ってくるので、すれ違うのを待っていると、それだけでも結構な時間を食うようでした。
この日、下山途中にすれ違った人は200人は超えるでしょう。
朝から茹だるような暑さで、みな、喘ぎながら登られてくるのを見ていると、「人はなぜこれほど喘ぎながらも山に登るのか?」などという疑問が湧き上がってくるのでした。勿論、私自身も含めてですが・・。
秩父沢を越えて少し下ると、槍の姿がよく見える場所がありました。登りの最中は全然気づかなかったのですが、下りだと、目の付け所が全然違ってきますね。
望遠レンズでズームしてありますので、よろしければクリックして大きな画像でご覧ください。
下りで槍の姿が見えるのはこの付近までのようです。
タニウツギのやさしいピンクを3日ぶりで見ます。
抜戸の稜線がますます大きく見えてきました。かなりの迫力ですね。
この日は猛烈な陽射しでした。下る私たちはまだ良いですが、登ってくる人たちは汗びっしょりでした。
林道沿いにはハナニガナも見られましたが、四国でもおなじみのシロバナニガナも風に揺れています。
去年この付近に咲いていたニッコウキスゲはとうとう見られませんでした。
こんな花が咲いています。花だけ見るとショウマの一種みたいですが、葉っぱがまるでシモツケソウみたいです。
先ほど調べたところオニシモツケという種類のようです。
今まで見ているのかも知れませんが、気づいたのは初めてでした。まだ咲き始めのようでした。
わさび平へと続くブナ林の道です。花撮影のため私は遅れて歩いているので、Kさんはすでに300mほど前方を歩いています。
向こうからは、通行禁止の車道の気楽さで、のんびりと横並びで今から登ろうとする人が歩いてきています。今は、こんな歩き方ができる道はほんとに少なくなりました。
木陰のない道は暑かったのですが、ブナ林に入るとまるで別天地のように涼しい風が吹いていて、木陰のあり難さをつくづく感じました。特にブナ林の中を吹く風は涼しいように思いましたが、それは気のせいでしょうか?
林道沿いに見かけたスミレですが、すでに閉鎖花をつけています。葉っぱからだけでは流石に名前まではわかりませんでした。
まだ完全に色づく前の不思議な色合いのマイヅルソウの実もたくさん見かけました。
標高差1700mを登ることで、蕾の状態から実の状態まで見られます。
帰宅してから調べたらオニノヤガラのようです。初見でした。
ナラタケと共生する腐生植物のようです。
道理でいくら探しても葉っぱらしきものが見られなかったはずですね。
しかし、この付近ではあまり自生してなかったようでした。
くり抜いた木の中でよく冷えたリンゴを買って丸かじりしました。
去年も下山したときにリンゴをかじったのでした。毎年、こうして夏の記憶が刻み込まれるのは嬉しいことです。
小屋の前には、今から登ろうとするパーティーもまだいたのですが、暑さで厳しい登りになったのではないでしょうか。
keitann様 こんにちは オニシモツケは新穂高付近や、上高地の周遊路周辺でも見られるそうですから、お診立ては恐らく正しいでしょうね。
小生も以前この草の名前が判らなくて、葉っぱを一枚失敬して、新穂高のバスセンター中を聞きまわったことがあります。
その時はどなたに聞いても判らなかったですね。
オニノヤガラはこの時季に見られるのですか? 小生はまだ出会ったことが無いのですが、面白そうなランですね。
秩父沢下から見た槍ヶ岳は、随分異な姿になってきましたね。
この日の暑さは極め付けで、これから登られる方には辛かったでしょうね。
投稿: ぶちょうほう | 2008-08-01 10:05
ぶちょうほう様、こちらにもコメントいただき、ありがとうございます。
下っていて、こういう白い花はあちこちで見かけました。花だけ見るとショウマなのですが
葉っぱを見るとまるでシモツケソウと同じ葉っぱだったので、調べるとオニシモツケでした。
去年ももしかしたら見ているのかも知れませんが、ショウマの仲間だと思い込んで撮影したないのかもしれません。
オニノヤガラは今から咲き始めようと言うところのようでした。8月が見ごろかも知れませんね。
秩父沢の下からだと、小槍がずいぶん目だちますね。
望遠レンズの倍率のいいのだと、登っている人まで見えそうな気配でしたよ。
眺めがよいと歩くのは二倍楽しくなりますね。
投稿: keitann | 2008-08-01 23:39