翌15日は3時半起床。というのも小屋の朝食は5時に出るので、食事前にもう一度ピークまでピストンと言う予定だったのだ。外に出ると、鋸岳は何とか見えているが、そうこうするうちにガスがまた出てきた。馬の背ヒュッテから上がってきた中学生たち20名ほどが引率の先生に連れられてピークを目指して上がっていく。そのピークもガスに覆われて今では何も見えない。管理人さんに「小仙丈に行ってくるといいよ」と言われ、それではということで小仙丈を目指す。辺りはうっすらと明るいが念のために懐中電灯を持つ。薄暗いのではっきりとは見えないが、道の傍らにはやはりキバナシャクナゲが咲いている様子だ。10分ほどで仙丈と北沢峠との分岐に出る。ここで大失敗してしまった。小仙丈はこの分岐と仙丈本峰との間にあるのだとばかり思って、ピークのほうに向かってしまった。Oさんが朝一で調子が出ないので、ここで引き返すと言うので、私とSさんとで進む。辺りはもうガスの中で何も見えない。10分ほどでなにやら小高いピークらしきものが見えたので、下に巻き道も見えたが、登ってみる。道標も何も立っておらず、小さな石の柱が立っているだけ。おかしいねとSさんと話すが、地図を持ってきていないので、確かめるすべがない。中学生の話し声が聞こえる。どうやらさきほど小屋を出発した中学生が仙丈のピークで休憩しているらしい。しかし、ガスのため視界がきかないので声だけだ。
このガスではどうしようもないので、すぐに引き返すことにする。帰りにはうっすらと明るくなり始めたのでミヤマダイコンソウが咲いているのがわかった。昨日は葉っぱは見かけたけど、花はまだ蕾だったが、こちらの稜線のほうが花が早いらしい。
ハクサンイチゲもこんな風に道のわきに咲いている。
下っている最中に小屋の食事時間を知らせる鐘の音が聞こえた。
結局、小屋に着いてから地図で確認したら、小仙丈は北沢峠方面に下る途中にあるのだった。やはりちょっとと思っても地図は持つべきだと痛感した。
無駄足にはなったけど、これこそほんとの朝飯前の一運動になって、朝食が美味しい。食後、北沢峠からのバスの時間を調べる。一番早い便が10時発、次だと13時。これでは少し遅いので、10時のに乗ることにする。やはり食後はコーヒーが飲みたいので、コーヒーを飲んでから出発は6時半。
出かける前になんとなくガスが晴れてきそうだったし、実際、八ヶ岳や蓼科山がよく見えたので、Sさんが「ピーク経由で下山したい」と言う。いいよと言うことで、ゆっくりと再びピークに向かう。今度はザックを背負っていることだし、Oさんもイマイチ体調が良くないようなので、私がトップを歩き、ゆっくりのペースで登る。Sさんは体力があるので飛ばしたいようだが無理は禁物。
登りは少し苦しくてもたったの30分だし、昨日一度登っているので、様子がわかるのが幸いだ。西方面の中央アルプスや伊那辺りは晴れていてよく見えるのに、東と北はガスの中で何も見えない。ピークでもとまらず、そのまま小仙丈へと向かう。早朝に行った場所はやはり小仙丈へと続く稜線上の一つのこぶだったようだ。
前を歩いていた数人の中学生と引率の先生がなにやらカメラで撮影している。
訊いてみると「雷鳥がいます」とのこと。ガスと薄暗いのとではっきりわからないが、なるほど、ライチョウの親子がお尻をこちらに向けてじっとうずくまっている。っそういえば、小屋の人が昨日「運がよければ雷鳥が見られるよ」と言ってたなぁ。
望遠だし、ガスの中での撮影ではっきりとはわからないだろうが、画像中央に雷鳥がうずくまっているのがわかるでしょうか?
大学の頃、夏合宿で北アルプスに入ると登山道のすぐ横で雷鳥が歩いていたものだった。人が通ってもちっとも逃げず、鈍感そうな鳥だなぁと思ったけど、その後この雷鳥は減り続けているらしい。その頃だって、人が山に入り人の残した残飯を食べることで雷鳥に悪影響が出ているという話を聞いた。Oさんの話では最近では高山にも猿が上がってくるようになって、その猿が雷鳥を食べるのだと言う。
嬉しいことに北に向かうにつれてガスが晴れてきて、小仙丈方面が見えてき始めた。
後ろを振り返ると仙丈のピークは相変わらずガスに包まれているが、私たちの少し後ろを下ってくる中学生たちがはっきりと見える。
しかしバスの時間もあるし、充電が出来ないので、今朝から携帯もデジカメもバッテリー切れ状態だから、そうそう画像が撮れない。
小仙丈へはちょっとした岩場があるが、そう危ないと言う訳でもない。
小屋を出てから1時間10分後、小仙丈に到着。ここで小休憩。先ほどから鳳凰三山がよく見えていて、地蔵岳のオベリスクもよく見える。しかし、北岳はどちらなのだろう?
と思っていると、稜線の東側に大きな山が現れた。高さと言い、大きさと言い、これが北岳に違いない。念のため地図で確認。うん、間違いない。その後ろには富士山も時折見え隠れしている。
これで、見たかったものはすべて見ることが出来たね。
心おきなく下ることが出来る。
8時10分、小仙丈を出発。バスの時間が心配なので、ここからはペースを速くしたいところだ。ところが、道はお世辞にも歩きやすいとは言えず、急勾配で慎重に下らないと滑ったり転んだりしそうだ。眼下はるかに今から下る北沢峠の幕営場が見える。丁度1000mの下りだけど、こんなにはっきりと下っていく先が見えるというのも珍しいよ(^^;)
道はやがて樹林帯に入ったが、しばらくは歩きにくい道だった。Sさんの話ではこのコースはきついのと暑いのとで、ちょっと登る気がしないコースなのだそうだが、なるほど花も少ないし、あまり快適な登り道とは言えない。それでも時折、単独の女性や年配の夫婦連れの人が登ってくる。
途中ツマトリソウを見かける。もう撮影はあまりしないつもりだったが、余りの可愛さにこの花だけは撮影する。
初めて見る花だと思ったが、後でよく考えたら、去年、剣山でも見ていたのだった。画像では出てないけど、花びらの縁がかすかにピンクがかっているのが、なんとも言えず可愛い。
ゴゼンタチバナも咲いている。ゴゼンタチバナのほうは標高3000近い稜線でもハイマツの下などで見かけた。適応力があるらしい。
大滝の頭にはコースタイム通り、40分で到着。引き続き下る。コースタイムでは北沢峠まで1時間だが、ぎりぎり、バスに間に合うか?
ここからは道もそれほど急ではなく、どんどん飛ばす。
辺りにシダが見え始めたので、そろそろ北沢峠かなと推測する。前日に北沢峠付近を散策したとき登り道付近にシダがいっぱい生えていたのを思い出したからね。
思ったより早く、9時40分に北沢峠のトイレの建物の屋根が見えた。やれやれ、飛ばしたおかげでバスの時刻の20分前に到着することが出来た。
画像は北沢峠の長衛荘の建物。
こんな早い時間に山を下る人はほとんどいなくて、帰りもバスにゆったりと座ることが出来た。
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