やがて、標高2300m地点も過ぎて、樹林帯の中の下りとなりました。
この辺りの植生は鏡平付近と似ています。キヌガサソウが樹林の下に出てきました。このキヌガサソウって、木の株元の木陰になるような場所に咲いてることが多いですね。直射日光が嫌いなんでしょうね。
静岡の人にさよならを言って、一人で下り始めますが、はるか下のほうを2人組の方が下っているだけで、後は誰も見えません。風が結構きつくて雨具のフードが直ぐに飛ばされそうになるので、ゴムをしっかり引っ張って歩きます。
槍ヶ岳に登って山荘に帰ってきたら、雨のため、折角着替えた衣類がまた濡れてました。そこで再び着替えて、濡れた雨具やウエアなどを乾燥室に干します。
出かける前には同室の女性たちは談話室にでも行ったか見かけなかったのが、今度は2人ともいました。双六小屋の同室の方は私より年長の貫禄ある方が多かったのが、ここ槍ヶ岳山荘では私より若い人ばかりで、これまた楽しかったのです。
もともと私にとっては槍ヶ岳は特に憧れの山と言う訳ではありませんでした。というのも、大学で山登りの同好会に入ったのですが、私には年子の弟がいて、その弟が京都の大学に進んで一年目の夏休みに「槍ヶ岳に登ってきた」と言うのです。弟は私と違い、小さい頃から家の中での遊びが好きで、私のように野山を駆け回るのとはタイプが違ってました。運動部に所属したこともないし、体力があるようにも思えません。その弟が登山靴でもなんでもない普通のスニーカーで登ってきたというので、槍ヶ岳というのはずいぶん簡単に登れる山のようだというイメージが私の頭にできてしまったのです。加えて、位置的にも北アルプスの南部にあるので、四国からは出向きやすいので、いつでも行けそうです。そんなわけで、学生時代の夏合宿では、なるべく北のほうに位置する大日~剱岳~立山~薬師とか、針ノ木~後立て~白馬~日本海などと言うコースを選んで歩きました。
山歩きを再開してからも、観光客の多そうな上高地にあまり行きたくなかったのもあって、槍に登ろうという気がなかなか起きなかったのですが、今回は後輩がやはり新穂高からの登りがアプローチしやすいというので、それならば西鎌~槍もいいかと思えたのです。
そんなことで、今回の槍ヶ岳登頂は遣り残した宿題を片付けるという気持ちが一番近かったかもしれません。
チシマギキョウが綺麗に咲いているのを眺めながら、双六小屋で作ってもらったお弁当を半分ほど食べます。考えたら、朝からすでに2時間ほど歩いているはずで、しかも登りがあったのですが、ガスっていて気温も低めなのか、全然のどが渇きません。お弁当を食べるのに、2口、3口、お茶を飲んだぐらいで、体が水分を要求しません。結局、この後もほとんど水分を摂ることはなく、6時間ちょっとの歩きで、摂った水分は200mlぐらいでした。
ここまでで、途中、ナナカマドの繁みを通過するところがあって、濡れそうなので、すでに雨具を上下とも着込んでいます。
前後に人影はありませんが、道はしっかりしているし、千丈沢乗越までは一本道なので、迷う心配もありません。
次々とでてくる花に気をよくしながら歩きます。
すると、結構大株のウスユキソウの仲間が咲いていました。
思いがけない槍穂の姿を20分ほども楽しんだでしょうか。
これは案外、前日と同じパターンで昼間は晴れ間もあるのかな?などと微かな希望的観測を抱きながら樅沢岳を下ります。といってもほんの50mほど下るだけですが・・。西鎌尾根は地図で見ても、また、弓折岳方面から実際に眺めても、ほとんどアップダウンのなさそうなコースです。
登っても下っても、せいぜい100mまでのようですね。
今回の歩きでは双六小山では今まで2度も歩いていて、勝手のわかった道ですが、双六小屋以後はまるっきり初めての道です。ですから、樅沢岳は久々に踏んだ初めてのピークでした。
10分ほど休憩でもしようと、周囲を眺めていたら、男の人が二人、双六方面から登ってこられて、山頂で記念に写真を撮りたいとうので、頼まれてシャッターを押してさしあげました。そのカメラがペンタックスのずいぶん重い本格的なカメラです。
私のほうも初めてのピークなので、私のカメラで珍しく記念写真を撮ってもらいました。
翌日、たまたま槍平からのエスケープルートを一緒に下らせていただくことになったのが、このお二人だったのでした。お二人は山の写真が目的の山行のようでした。
双六小屋は今回で3度目の宿泊で、勝手がわかっているので、落ち着きます。
受付にいる方も3年前と同じ方でした。通された部屋はこれまた3年前に泊まったのと同じ部屋で、窓を開けると正面に樅沢岳が見える部屋です。同じ部屋に私も含めて結局7人の女性が泊まったのですが、母娘で高天原方面から縦走されて来たというその娘さんのほうを除いた後の6人はどなたも中高年の女性の方ばかりでした。
翌日に私と同じ西鎌尾根ルートで槍に行きたいといいう、やはり単独の女性の方がいらして、地図を熱心に見てはコースタイムの計算をされてます。私も同じルートを歩こうと思っていたので、いろいろと相談させてもらいました。その方が小屋の方にお話を聞いてこられ、西鎌尾根で注意すべき場所は鎖場と稜線が左側に切れ落ちている箇所、それに突風が吹くことがあるので気をつけることだそうです。
その夜は前夜の睡眠不足を解消すべく、夕食時にビールを1缶飲んでそのまま爆睡の予定が、同室の方々のお話があまりにも面白くて、結局、消灯時刻の8時半まで眠くならず、就寝は8時半過ぎでした。
翌朝は部屋の電灯が点くのが4時だそうで、4時過ぎに目覚めたら、同じ部屋の方たちはほとんど起きてらしたようです。私は小屋の朝食は頼んでなくて、プリムスでお湯を沸かし、コーヒーとクラッカーで簡単に朝食を済ます予定です。ところが、お湯は小屋の方が大きなやかんに沸かしてくれてたので、それを分けていただきました。おかげで自炊室に行くこともなく、部屋で簡単に朝食を済ますことができました。これだと朝の出発がスムーズで楽です。朝食は頼まない代わりにお弁当は作ってもらいました。
ベンチに座ったまま20分ほども槍穂方面のガスがはれるのを待っていたでしょうか。
単独での歩きというのは、誰にもせかされることなく、時間さえ許せば好きなところで好きなだけ眺めを堪能できるのが良いですね。
そうこうするうちに、上から女性の二人組みが下ってこられました。
急登でもなんでもないだらだらとした登りのトラバース道は、結局、この日いちばん疲れの出た辺りでした。花が多いというのを言い訳にして、かなりのゆっくりペースで歩きます。時間は幸い、早発ちのおかげでそれほど気にしなくても良いのが有難いです。
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